一般社団法人一関青年会議所
2024年度理事長所信
第69代理事長 鈴木 達也
【はじめに】
皆さんには小さい頃どのような思い出があるでしょうか?
小学生の頃のボーイスカウトでのキャンプ体験、二代目時の太鼓大巡行などの地域のイベントへの参加、家族での紙すきや舟下り体験など、地元に多くの思い出があります。
中高生の頃には、部活帰りにラーメンを食べたり、まちなかで友達と過ごしたりと、今でも思い出す風景があります。
社会人となり、地元に帰ったとき、今までなかった新しい場所や体験がある一方で、思い出のつまったラーメン店やアパレルショップがなくなっていることや、イベントの規模が縮小されていることに気づき、寂しさを感じていました。
一関青年会議所に出会い地域活性化に取り組む中で、昨年、私たちは「一関を魅力的な地域に変えるためには、どのような未来を描くべきか」というテーマで、若者と地域の人々が、語り合う事業を実施しました。
そこで、年齢や性別を超えて、より良い未来を築くために目を輝かせ、積極的に意見を交換する参加者の姿がありました。
しかし、その中で一人の参加者の言葉に私はハッとしました。「地域の課題解決が重要と考えている若者が増えているのか?それとも、自分たちで課題を解決しなければいけない環境になってしまったのか?」
私が10代の頃は、都会に対して憧れを抱いていながらも、地元の未来に不安を抱いていなかったことに気付かされました。私にとっての一関は、多くの体験の機会、場所を提供してくれた場所であり、この地域が残り続けると感じさせてくれていました。
このことが、私が一関に帰って来たいと感じた一つの理由となっていたのだと思います。
「地域をよりよくしたい」と活動している今の若者たちは、地域の未来に対して漠然とした不安があるのかもしれないと感じ、彼らや自分の子供たちに自信を持って「帰っておいで」と言えるか考え始めました。
【子供たちに「帰っておいで」と言えるまち】
一関市は岩手県内で面積第2位、全国でも12番目の広さを誇ります。県内トップクラスの生産高を誇る稲作や畜産を中心とした農業。伝統工芸や電気電子部品製造をはじめとする製造業。登山やスキーやスノーボードを楽しむ人々に愛される東西に広がる山々。広い市内に多くの特徴があります。
現在、日本は少子高齢化に伴う人口の減少や、地球環境の変化から来る異常気象による災害の増加など、不確実性の中で多くの問題・課題に直面しています。
私たちの住む一関も、現在の約10万8千人から2045年には約7万4千人まで減少する推計が出ています。特に少子高齢化による生産年齢人口比率が現在の53%から48%となる推計であり減少が目立っています。
人口減少は消費者の減少につながり、まちの中で日常的に消費をする商圏人口は縮小していくことが見込まれます。特に高齢者に比べて消費支出額が多い生産年齢人口の減少は、地域経済に大きな影響を与えます。
また、市外の消費者や企業にモノやサービスを展開する企業などにおいても、国内需要の減少を見越した対応の必要性が高まっています。地域における付加価値額を今後も維持するためには、労働人口が少なくなる中、労働者1人当たりの生産性を高めることが求められます。
これら地域経済の縮小は、地域内で働くときの選択肢や待遇の悪化を招くとともに、所得が改善されないことにより安心して子育てや結婚ができなくなってしまいます。
また、スポンジ化現象により一人あたりの社会インフラコストの負担が大きくなり、現状の形で地域を維持することは困難です。
地域で安心して暮らしていくためには、経済的に安定し、多様な働き方の選択肢があり、自立していけることが求められています。
本年度は、私たち大人が自分たちの子供に「帰っておいで」と胸を張って言えるまちづくりのために、「経済・暮らし・文化」の質を高める運動に取り組んで参ります。
【まちの未来をつくる質の高い経済】
少子高齢化と人口減少の進行は経済規模の縮小や、人口密度の低下によるインフラの衰退を招きます。これらに対応するためには、地域内外で特徴を活かした役割分担を行い、それぞれの地域で暮らしていけるようになることが重要です。他方で、地域での役割分担を進めていく中で、従来の役割を持っていた人を取り残すことなく助け合うことも重要な課題となります。これらを解決するために、地域の特性を生かしながら、課題を解決することで地域内の人やモノ、カネの循環を作り出し、経済の質を高める運動に取り組んで参ります。
【自ら主体となって暮らし続ける地域一関に】
人口減少により、経済、生活基盤の不安定化が進む中、従来どおりの発想や取り組みでは通用しない大きな転換期を迎えています。
自分たちの地域を住みやすくするためには、多様な考えを取り入れながら、「市民主体」で自ら考え共に行動することが求められています。 市民、地域、企業、行政など多様な担い手が、それぞれの立場や責任に応じて協力関係を築き、共に行動し自分たちが住み暮らす地域を理解し合う必要があります。
それにより、地域の中での協調性が生まれ信頼やネットワーク、個々の技術やスキルといった様々な価値を共有することができます。
それぞれが課題解決の担い手としての強みや役割を互いに理解し、各地域が持続可能性を見出し協力することで暮らしの質を上げ、安心して生活できるまちを創っていくための運動を展開して参ります。
【「二代目時の太鼓大巡行」を中心とし文化の質を高め、地域文化を継承する】
「一関にすぎたるもの二つあり 時の太鼓と建部清庵」という言葉が示すように、江戸時代において時を告げる太鼓は希少であり、その伝統的な価値が一関の誇りとなっています。1976年に始まった「時の太鼓兄弟 揃い打ち巡行」から始まった「二代目時の太鼓大巡行」は、一関夏まつりにおける大きな存在となりました。
私が子供の頃に体験し、今でも心に残る「二代目時の太鼓大巡行」。昨年、45回目の節目を迎えました。一関藩主田村家の歴史的なつながりからはじまり、ゆかりのある三春町と岩沼市で活動する青年会議所と連携して地域交流を促進し、子供たちに対してエンターテインメントを活用したアクティビティを提供するなど、地域との結びつきを深める取り組みも行われました。
人口が減少しても、担い手が集まる文化とするために、一関地域にとって重要な文化であることを多くの市民に再認識してもらい、魅力ある「二代目時の太鼓大巡行」を次代に残していく必要があります。
この「二代目時の太鼓大巡行」を通じて、関係地域と連携し、多様なストーリーを繋ぎ、魅力や価値を共有し、共感を生み出すことで、地域文化の質を上げ、次世代に引き継いで参ります。
【明るい豊かな地域を作るための持続可能な組織に】
一関青年会議所は、68年間地域の課題解決に挑み続けてきました。繋いできた大事な想いを引き継ぐとともに、時代に即した組織へ常に変化し続けることで、地域にとって必要な組織であり続けなければいけません。
現在の一関青年会議所は、会社員や女性など多様なメンバーにより構成されており、その多様性は、それぞれのライフスタイルや働き方に表れています。
メンバーの強みや特徴考えを理解し合うことで、互いを尊重しながら活動することにより強固なつながりを構築できると考えています。過去から繋いできた歴史を振り返り、私たちの組織文化や仕組みの意味を再認識し、時代に合わせた組織へと変化していくとともに、新入会員をサポートし、共に活動をする仲間として迎え入れる環境を整え、多様なメンバーが安心して活躍できる組織の仕組みを確立していきます。
また、より多くの新しい仲間を迎え入れることで、様々な視点が生まれ、より地域に対してインパクトのある運動を展開していくことが可能となります。
新たな仲間との結びつきは、われわれの運動の拡大や、地域課題の解決に不可欠です。
時代に即したツールを利用して、われわれの活動や想いを広く伝え、共感を得ることが重要です。
組織の未来はその組織のメンバーにかかっています。地域のリーダーとなる多様な仲間を迎え入れ、地域課題を解決し住みやすいまちをつくり続ける一関青年会議所を共に創っていきます。
【結びに】
一関青年会議所に入会し、これまで家族や地域社会から得た数々の思い出や機会を通じて、自分が成長できたことに改めて気づくことができました。入会してからも様々な活動を通じて、多くの人々と関わり、メンバーたちの支えを受けながら学び、成長できたと実感しています。
その中で、一関には地域をより良く住みやすいまちにしたい、よりワクワクできるまちにしたいと活動している多くの人がいると知りました。
多くの人が関わり合い、「経済・暮らし・文化」の質を高め合うまち。
そんな、経済的にも豊かで、地域ごとに自立しながら支え合う持続可能なまちは、自信を持って子供たちに「帰っておいで」と言える一関になるはずです。
「LET’S BE POSITIVE~新しい視点で、新しい未来を~」
捉え方で同じ物事でも、前向きにも、後ろ向きにもなります。
課題や、問題を前向きに捉え、また「失敗や困難も未来を作るために必要なもの」と前向きに捉え、未来を作ってきいきましょう!
一関のことを思い、明るい豊かな社会、つまり、持続可能な一関の実現に向け68年間先輩方が繋いできた想いや事業。脈々と受け継がれる魅力ある地域の歴史。
それらに、私たち現役メンバーや地域の皆様の想いを繋ぎ、そのバトンを次代へと繋いで参ります。
皆様の力をお借りしながら、全力で前進して参りますので、一年間よろしくお願いいたします。
子供たちに「帰っておいで」と言える一関を創造する
1.地域資源を活用した経済循環の推進
2.自立・分散型社会を実現する地域づくり
3.「二代目時の太鼓大巡行」を中心とし文化の質を高めることによる地域文化の発展・継承
4.新たな仲間づくりと、多様なメンバーが自分らしさを発揮できる持続可能な組織づくり